パンズ・ラビリンス

10月7日 伏見ミリオン座
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イヴァナ・バゲロ,ダグ・ジョーンズ,セルジ・ロペス
自分は小学生のころ,外国のファンタジー小説が好きで良く図書館で借りては読みふけっていました。ファンタジーは単純にドキドキワクワクさせてくれるものもありますが,中には辛く悲しいお話もあります。
剣や魔法の世界という夢物語の入り口は甘いお菓子のようですが,名作と呼ばれるファンタジーは甘さだけでなく,現実世界の厳しさを子供達に教えます。そのときに理解できなくても,彼らが大人になった時に振り返ると「ああ、あの物語のあの言葉はこういう事を表現していたのか」と思い出せてくれます。
<ストーリー>
第2次世界大戦時のスペイン。父をなくした少女オフェリアは母カルメンと共に,母の再婚相手であるビダル大尉の下に身を寄せる。だが義父であるビダル大尉は冷酷で残忍な男だった。また母も臨月で床に伏せっており,以前より裕福な環境にはなったが現状に喜びを見出せないオフェリア。そんな彼女の前に不思議な虫が現れ,彼女を屋敷付近の遺跡の奥へと導く。そこで彼女が目にしたのは牧神パンだった。パンは彼女の正体は地の底の王国の王女であると告げ,王国に帰るには3つの試練を経なくてはいけないと教える。屋敷に戻ったオフェリアはパンから受け取った本を道標にして危険な試練に挑む。
一方,ビダル大尉の下で家政婦を勤めているメルセデスは,実はビダル大尉と敵対しているゲリラとの内通者だった。ビダル大尉の目を盗みゲリラに物資を送るメルセデス。その現場をオフェリアに見られてしまうが,孤独なオフェリアと孤軍奮闘するメルセデスはお互いに相通ずるものを見出す。
しかしゲリラの一人が捕らえられたことから,メルセデスの身にも危険が忍び寄る。
以下,ネタバレ含む感想
日本版ポスターの可愛らしさに騙されて,この映画を他のファンタジー映画を見せるつもりで鑑賞させたら子供が泣き出すこと間違いなしの鬱系ダークファンタジー。
この映画では内戦による凄惨な現実とやるせなさをこれでもかと観客に突きつけ,そこから逃避するための妄想のようにファンタジーという入り口を用意しているかのように感じさせます。
以前DVDで見た「クイーン&ウォリアー」でもありましたが,ファンタジーとは所詮妄想であるという現実を突きつけられるのがファンタジー好きには一番痛いのです。
オフェリアが訪れる恐ろしくも妖しい世界は,決して甘い蜂蜜のような夢の楽園ではなく,むしろ現実を否定したい彼女を試すかのようなおどろおどろしい怪物ばかりが現れます。しかしそのおどろおどろしさですら内戦が産む悲惨さという「現実」に比べれば可愛いものだという見方もできます。
この映画の面白いところはファンタジーの世界を認めるでも否定するでもなく,ただオフェリアを含めた全ての状況を俯瞰的に捉え,ありのままを表現しているところです。
オフェリアの見ているのは現実か?妄想か?それを区切る明確な回答は映画の中にはありませんが,この物語をただの悲劇で終わらせていないポイントはメルセデスの存在です。
ただ一人ビダル大尉の下でスパイを続けるメルセデス。彼女は遠くの国へ逃げるという選択肢もあったにも関らず,彼女は自分の意思で戦うことを決めます。それは心を閉ざさず,人間らしく生きようとする姿であり,医師フェレイロの言葉を身をもって示すものでもあります。そして彼女が戦うのは自分一人のためではなく肉親である弟を守るためでもあります。
メルセデスの選択はオフェリアの最後の選択にも通じるものがあります。それが名作童話「はるかな国の兄弟」の結末とはまた違った余韻を感じさせました。これもある意味ではハッピーエンドだと僕は思います。例え現実ではそう思われないにしても。
しかしギレルモ・デル・トロ監督の作品がこんなにグロ&虫好き&鬱系だとは予想外でした。ブレイド2やヘルボーイではここまで凄くなかったのに…。
ただ伏線の貼り方などは想像を掻き立てられて,非常に面白く見ることが出来ました。
ペイルマンやパンという恐ろしいクリーチャーの描写もさることながら,ビダル大尉の持つ圧倒的な存在感と父親の影に取り付かれる孤独な姿は目を見張るものがあります。独裁者のモチーフとして製作側も狙ってるかもしれませんが,ヒトラーを連想しましたね。
評価:★★★★☆

おぞましく恐ろしいがゆえに魅せられる。それもファンタジー。
この映画では内戦による凄惨な現実とやるせなさをこれでもかと観客に突きつけ,そこから逃避するための妄想のようにファンタジーという入り口を用意しているかのように感じさせます。
以前DVDで見た「クイーン&ウォリアー」でもありましたが,ファンタジーとは所詮妄想であるという現実を突きつけられるのがファンタジー好きには一番痛いのです。
オフェリアが訪れる恐ろしくも妖しい世界は,決して甘い蜂蜜のような夢の楽園ではなく,むしろ現実を否定したい彼女を試すかのようなおどろおどろしい怪物ばかりが現れます。しかしそのおどろおどろしさですら内戦が産む悲惨さという「現実」に比べれば可愛いものだという見方もできます。
この映画の面白いところはファンタジーの世界を認めるでも否定するでもなく,ただオフェリアを含めた全ての状況を俯瞰的に捉え,ありのままを表現しているところです。
オフェリアの見ているのは現実か?妄想か?それを区切る明確な回答は映画の中にはありませんが,この物語をただの悲劇で終わらせていないポイントはメルセデスの存在です。
ただ一人ビダル大尉の下でスパイを続けるメルセデス。彼女は遠くの国へ逃げるという選択肢もあったにも関らず,彼女は自分の意思で戦うことを決めます。それは心を閉ざさず,人間らしく生きようとする姿であり,医師フェレイロの言葉を身をもって示すものでもあります。そして彼女が戦うのは自分一人のためではなく肉親である弟を守るためでもあります。
メルセデスの選択はオフェリアの最後の選択にも通じるものがあります。それが名作童話「はるかな国の兄弟」の結末とはまた違った余韻を感じさせました。これもある意味ではハッピーエンドだと僕は思います。例え現実ではそう思われないにしても。
しかしギレルモ・デル・トロ監督の作品がこんなにグロ&虫好き&鬱系だとは予想外でした。ブレイド2やヘルボーイではここまで凄くなかったのに…。
ただ伏線の貼り方などは想像を掻き立てられて,非常に面白く見ることが出来ました。
ペイルマンやパンという恐ろしいクリーチャーの描写もさることながら,ビダル大尉の持つ圧倒的な存在感と父親の影に取り付かれる孤独な姿は目を見張るものがあります。独裁者のモチーフとして製作側も狙ってるかもしれませんが,ヒトラーを連想しましたね。
評価:★★★★☆

おぞましく恐ろしいがゆえに魅せられる。それもファンタジー。
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